安倍晋三首相は新年恒例の伊勢神宮(三重県伊勢市)を6日に参拝した。その直後の記者会見で、夏の東京五輪・パラリンピックを挙げ「この歴史的な年を日本の新時代を切り開く1年にしたい」と高々と宣言した。首相は昨年11月19日、近代以降の内閣制度の下で最長在任日数となった。もっともそこに祝賀ムードはなかった。「桜を見る会」では自身の公私混同が厳しく問われた。自衛隊を派遣する中東の情勢は緊迫化し、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件は元内閣府副大臣の逮捕に発展、捜査の行方は見通せない。
政権に向かう国民のまなざしは厳しさを増している。20日に召集される通常国会では、越年したこれらの問題から逃れられないだろう。最長政権となった安倍政権のこれまでを振り返りながら、波乱が想定される政権の行く末を考えたい。(東京大学教授=牧原出)
■問われる首相の「風格」
長期政権と言えば、戦前では日露戦争を首相として指導した桂太郎、戦後では高度経済成長後半期に沖縄返還を成し遂げた佐藤栄作をはじめ、伊藤博文、吉田茂、小泉純一郎、中曽根康弘が居並ぶ。これら名宰相と比べ、首相安倍晋三にそれほどの高い評価を与えることができるかと言えば、やはり疑問が多い。
首相の公私混同は、夫人の振る舞いを制御できないことや、森友・加計学園問題など、さまざまな局面で見られる。首相自らヤジを飛ばして陳謝したり、厳しい質問では答弁に詰まったりする場面は国会の風物詩と化し、直近の国会では与党が首相を国会に登場させないよう国会運営で配慮し始めている。最長在任の首相に本来あるべき「風格」がないのである。
■長期政権の源泉
何がこの政権を長期政権へと導いたのか。首相安倍を支える政治家・官僚のチームの組織力は見逃せない。さえた知性に乏しい首相をチームが幾重にも補ってきた。経済産業省出身者で脇を固め、経済政策アベノミクスを練り上げるなどこれまでにない突破力と、危機管理にたけた警察出身官僚を中心に防御力を磨いてきたのである。
最長在任首相となった今、問われるべきは「安倍1強」と呼ばれる政治現象がどこから生まれたかである。そこには、政権交代が二重の意味で関わっている。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース